大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)4489号 判決

原判決は、犯罪事実の第一として、被告人が昭和二十三年四月二十九日より昭和二十四年七月二十五日までの間多数回に亘り世帯主西山光雄名義の主要食糧購入通帳を使用し、被告人の飯場に実在しない世帯員を実在するものゝ如く装つて食糧配給公団東京都昭和郷配給所係員を欺罔し、右不在の世帯員に対する配給の名下に米換算合計三千三百七十六瓩四百七十三瓦の主要食糧の交付を受けてこれを騙取した事実及び犯罪事実の第二として被告人が昭和二十三年四月二十八日より昭和二十四年七月二十五日までの間多数回に亘り、世帯主佐々木弘名義の主要食糧購入通帳を使用し、右飯場に実在しない同世帯員を実在するものの如く装つて前記配給所係員を欺罔し、右不在の世帯員に対する配給の名下に、米換算合計約千二百六十八瓩六百五十五瓦の主要食糧の交付を受けてこれを騙取したとの事実を認定し被告人の右所為に対し刑法第二百四十六条第一項、第四十五条前段、第四十七条、第十条を適用し前記第一の罪の刑に併合罪の加重をして処断しているから、原判決においては前記第一摘示の事実と第二摘示の事実とがそれぞれ一個の詐欺罪を構成し右二個の詐欺罪が刑法第四十五条前段の併合罪に該当すると認定したことが、明白に看取できる。しかし原判決第一の摘示事実を検討すると、被告人は多数回に亘り西山光雄名義の前記通帳を配給所係員に提示して、配給を受けていたというのであり、かように配給の都度、通帳を提示し実在しない世帯員についてその真実を告げることなく、主要食糧の交付を受ける場合は、その都度、相手方を欺罔して受配するのであるから、たとえ不在世帯に変動がない場合でも其の都度詐欺罪が成立するものと解せられるのみならず、原判示事実によれば、被告人は、当初は前記通帳の世帯員の内、飯場に実在しない三十三名について実在するものの如く装うて配給の請求をなし、昭和二十六年八月三十一日よりは十九名分について、昭和二十四年五月十日よりは二十四名分について、同年六月七日よりは七名分について、それぞれ不在者を実在するものの如く装うて配給の請求をしているのであり、かように内容を異にする詐欺手段を以て多数回に亘り主要食糧を受配する場合は、たとえ使用の通帳が同一であつても、その欺罔の内容を異にするに従つてその都度詐欺罪が成立するものといわなければならない。原判示第二の摘示事実についても右と同様であつて、被告人が世帯主佐々木弘名義の通帳を提出して受配する都度又不在者の内容を変更して受配する都度それぞれ詐欺罪の既遂となるものと解すべきである。

然るに原判決が前記の如く、原判示第一と第二の各事実をそれぞれ一括し、主要食糧購入通帳一冊毎に一個の詐欺罪が成立するものとして前記の如く擬律しているのは、法令の解釈を誤つた結果法令の適用を誤つたものというべく、而してこの誤が判決に影響を及ぼすべきことは明白であるから、論旨は結局理由があり、原判決はこの点において全部破棄を免れないものである。

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